厚生労働省の発表によると、令和2年6月時点で、一律に定年年齢を定めている企業のうち、60歳を定年年齢に定めている企業が91.1%、以下、61~64歳が2.5%、65歳6.1%、それ以上が0.1%となっています。
令和3年4月改正の高年齢者雇用安定法では、企業は雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するために必要な措置を講じなければならないこととされました。さらに、70歳までの高年齢者の就業機会の確保が「努力義務」となりました。
今のところは努力義務にとどまっていますが、既に火の車状態といえる年金財政や、今後のさらなる高齢化社会の進展を考えると、この「努力義務」はいずれ「義務(=強制)」化されることは明らかでしょう。
一方で、こう話す企業経営者の方がいます。「今は多くの会社が社会に合わせて60歳で定年退職にしている。でも基本は死ぬまで働いたら良いんじゃないかなと思う。本人がもういいというまで働く。給料も歳を取ったからといって減額なんかはしていない。どちらかというと徐々に上げていっていることが多いかな。人には向き不向きがある。スピードが必要な仕事は若い人の方が良いけど、品質は歳がいっている人の方が良い。また、会社の風土を創っていくときには、歳がいった人の方がとても大事だと思う。歳相応に果たしている役割があると感じている。各年代すべての人が在籍しているのが良いと思う。」
ここで「65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)」をご紹介しましょう。この助成金は、65歳以上への定年引上げ等の取組みを実施した事業主に対して最高160万円の助成金を支給するものであり、高年齢者の就労機会の確保および希望者全員が安心して働ける雇用基盤を整備することを目的としています(令和3年8月31日現在)。
現に1年以上在籍している60歳以上の従業員がいる企業が、
①旧定年年齢を上回る65歳以上への定年引上げ
⓶定年の定めの廃止
③旧定年年齢及び継続雇用年齢を上回る66歳以上の継続雇用制度の導入
等の要件をクリアした時に、受け取れる可能性のある助成金です。受給できる金額をまとめると、次のようになります。
65歳 | 66~69歳/5歳未満 | 66~69歳/5歳以上 | 70歳以上・廃止 | |
---|---|---|---|---|
10人未満 | 25万円 | 30万円 | 85万円 | 120万円 |
10人以上 | 30万円 | 35万円 | 105万円 | 160万円 |
66~69歳/4歳未満 | 66~69歳/4歳以上 | 70歳以上 | |
---|---|---|---|
10人未満 | 15万円 | 40万円 | 80万円 |
10人以上 | 20万円 | 60万円 | 100万円 |
助成金がもらえるから定年年齢を引上げよう、という考え方は推奨しませんが、近い将来、義務化されることが予想されます。義務化される頃には助成金の支給は無くなりますので、このタイミングで先取りして制度導入を検討することは大いにあり得ると考えられます。
いずれにせよ、冒頭にご紹介した会社の例のように、年齢に関係なく活躍できる職場、高年齢者だからこそ力を発揮できる舞台のある職場づくりが求められています。